「革の色が違う!革を扱う「プロが伝えたい、染料仕上げと顔料仕上げを徹底比較!」 - artigiano

「革の色が違う!革を扱う「プロが伝えたい、染料仕上げと顔料仕上げを徹底比較!」

2025年8月8日

EC販売でお客さんに商品が届いた後に、頂く声の中で『商品画像と色が違う!』という事が
あるんです。思っていた色違うとお叱りを受ける事があるので、プロが色合わせしてるのに
なぜ?違った色になるのかを紐解いて書いてみたいと思います。


革の仕上げ方法:染料仕上げと顔料仕上げの比較

革製品はその仕上げ方法(色付け)によって見た目や質感、耐久性が大きく変わります。その中でも見た目が大きく違うのに特に重要なのが「染料仕上げ」と「顔料仕上げ」なんです。

染料。。。顔料。。。。それってなに?

という事で今回はそれぞれの仕上げ方法の特徴、メリット・デメリットを詳しく解説していきたいと思います。

それでは本題を進めて行きます。まず基本的な所で言うと塗料の粒子の大きさが違うんです。粒子の違いでって言われてもピンときませんよね。。。。

字で書くと、染めと塗装の違いです。 染料は素材に染み込んでいき、顔料は素材の上に塗料の膜を
作るんです。 イメージで言うと、革自体に染み込んでいく染料と、革の表面に乗って膜を作って行く、と言うのが大きく違うんです。 そこでそうゆう違いが起きるかと言うと、わかりやすくイメージ
に置き換えますと、染料は透明カラーフィルム・顔料は折り紙に例える事が出来ると思います。
カラーフィルムの方は、重ねれば重ねるほど色が濃くなって行くのと下の色が透けて見えるので下の色にも大きく影響されるんです。なので仕上げ工程の前段階の下地の色にも、凄く影響されてしまうのです。



顔料の方は、折り紙に見立てる事が出来ると思います。一度、色合わせした色が出ると、いくら重ねても色が変化しないんです。

こういったそれぞれ理由で、染料の場合は下地の色の影響も受けるし、吹き付ける回数や部位によって染料の吸い込み量も違うので色が変わってしまうと言うのが大きな理由です。ただそこはプロの技術と経験により、出来るだけ合わしていくのですが先に上げた要因で色ブレしやすいので、風合いを生かし一定程度寄せるという感覚の仕事となってしまうのです。風合いを取るか色の精度のバランスの決まり事は特にないので、革の作り手にゆだねられている事となっています。

それでは、染料仕上げと顔料仕上げ、それぞれのメリットがありますのでご紹介していきたいと思います。


1. 染料仕上げとは?

染料仕上げは、革に染料を浸透させることで着色する方法です。染料は透明感があり、革のもともとの質感や自然な風合いを生かした仕上げが可能です。

【メリット】

  1. 自然な風合いを楽しめる
    染料は革の表面だけでなく内部にも浸透するため、革の自然な質感や独特の模様(シボ)がそのまま生きます。
  2. 柔らかい手触り
    顔料仕上げよりも革自体の柔らかさが感じられるため、革本体の手触りも残り高級感があります。
  3. 経年変化が美しい
    時間とともに使い込むことで独特の味わいが生まれ、「エイジング」を楽しむことができます。

【デメリット】

  1. 色むらが出やすい
    染料は透明感があるため、革の表面の傷やムラがそのまま見えることがあります。
  2. 耐水性が低い
    染料仕上げは革の表面に保護膜を作らないため、水や汚れが染み込みやすいです。
    シミになりやすいと言う特性もあるので、使い方に注意が必要とも言えます。
  3. 色あせしやすい
    日航堅牢度が弱く紫外線などにあたり、長期間使用すると色が薄くなることがあります。
  4. 色の種類により良くなる場合と悪くなる場合がある
    クロムレザーの場合は革自体の色が変わらないので、色褪せしてくる場合があります。
    タンニンレザーの場合は、下地の色が黄変してくるので茶系やキャメル系では、色が濃くなり
    良い変化を見せますが、赤・青・薄いグレーなどでは茶系が混ざり嫌な色に変化する事があります。鞣し方法や仕上げ方法に工夫が必要になります。


2. 顔料仕上げとは?

顔料仕上げは、革の表面に不透明な顔料を塗布する方法です。顔料は染料と異なり、革の表面を覆うように着色するため、均一な仕上がりが得られます。

【メリット】

  1. 色ムラが少ない
    顔料によって革の表面がしっかり覆われるため、均一で美しい仕上がりになります。
  2. 耐久性が高い
    顔料層が革を保護するため、傷や汚れに強いのが特徴です。
  3. デザインの幅が広い
    鮮やかな色や多様な仕上げ(光沢、マットなど)を施すことができ、ファッション性が高まります。
  4. 色の変化があまりない
    流行りのカラーなどを長く保つことが出来る。

【デメリット】

  1. 革の自然な風合いが損なわれる
    顔料が革を覆うため、革本来の質感や模様が隠れてしまいます。
  2. エイジングが楽しめない色の変化
    時間が経っても経年変化がほとんど見られず、ヴィンテージ感が出にくいです。
  3. 通気性が低下する
    顔料によるコーティングが革の通気性を妨げることがあります。

3. 染料仕上げと顔料仕上げの使い分け

それぞれの仕上げには一長一短がありますので、用途や好みに応じて選ぶのがポイントです。

・染料仕上げが向いている場面
 素材感を生かして、色の変化などのエイジングを楽しみたい方向け

・顔料仕上げが向いている場面
 ファッション向けんに流行りの色が良いアイテムで楽しみたい方向け


4. 選び方のポイント

  1. 耐久性を重視するか?
    長時間使用することを想定するなら顔料仕上げがおすすめです。傷や汚れに強いので、日常使いに適しています。
  2. 自然な風合いやエイジングを楽しみたいか?
    味わい深い革を好むなら染料仕上げが良いでしょう。使うほどに愛着が湧いてきます。
  3. 用途に合わせて選ぶ
    例えば、フォーマルなシーンで使用するアイテムなら顔料仕上げ、カジュアルなシーンなら染料仕上げを選ぶとバランスが良いです。

まとめ

染料仕上げと顔料仕上げは、それぞれ異なる魅力があります。自然な風合いと経年変化を楽しみたい場合は染料仕上げ、耐久性と美しい仕上がりを重視する場合は顔料仕上げを選びましょう。革製品を購入する際は仕上げ方法を確認し、自分のライフスタイルに合ったものを選ぶのがポイントです。

今回は、染料と顔料の両極端な仕上げについてご紹介したのですが、この間に染料・顔料仕上げ(セミアニリン)と言う仕上げ方法もあり、その組み合わせは無限に存在するので、その革に合ったメンテナンス方法や取り扱いが必要だと言えると思います。セミアニリン仕上げでも染料と顔料を混ぜると言うのが基本なので、染料。・顔料を混ぜて分量の多い方の特性が出てくるので、上記のそれぞれの特徴が出てくると考えてもらえると、正しい取り扱いが出来ると思います。

もし分からない場合は、お買い求め時にどういう仕上げの革ですか?と聞いてみるのも良いと思います。それぞれの特徴を知り、長く使い続けてもらい少しづつアイテムを増やして行ってもらえたら
痛みも少なく長く使って頂けるのが僕たちの願いでもあります。それでは、長くなりましたが革好き職人からのお伝えしたい事でした。読んでいただき、ありがとうございました。

ショート動画でも少しご紹介しています。

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