「クロムなめしはエイジングしない」は本当か? - artigiano

「クロムなめしはエイジングしない」は本当か?

2025年3月31日

今回は革の製品を取り扱う中で、クロムレザーってエイジングしないっていう事を耳にしたりして、少し誤解があるなぁと感じたので、そのあたりを書いてみようかと思います。

あくまで僕の主観なんですが、クロムレザーでもしっかりと作られている物は、
いい感じにエイジングするとおもっています!

僕は仕事柄もあるのですが、いくつか持っているバッグの中で、めちゃくちゃいいエイジングをしているクロムレザーのバッグがあります。それをよく持ち歩いているんですが、それを見てタンニン鞣しですか?とよく聞かれるのです。ここで良くヌメ革と比較されて「クロムなめしの革はエイジングしない」安くて悪い革みたいなイメージのある話について、少し掘り下げて書いてみようかと思います。

下の画像は、同じバッグでそれぞれ違う素材のバッグなんですが、どちらがタンニンかクロムか分かりますか?左がタンニンで右がクロムなんです。クロムの方は特殊な加工をしているので細かいシワが入っていますが。一見、右の方がシワも多くて革らしく見えたりしますね。一般的にはタンニンレザーは張りがあるので、バッグの姿勢がシュッとしているように見えますね。使っていての光沢は、染料仕上げなのでどちらも変わらない感じです。

何が違うかと言うところをみると、タンニンレザーは革を握りこんだ時にギュッと音がなります。
鳴き革とか言われたりしています。

確かにタンニンなめしの革(ヌメ革など)と比べると、クロムなめしの革はエイジングしにくいイメージがあります。そのエイジングの中でも、色の変化は少ないのがポイントです。しかし、「全くエイジングしない」わけではありません。

もう一つ大事な事があります。今、市場に出ている革の流通の中で比率で見てみると
ヌメ革よりもクロムレザーの方が圧倒的に多いんです。
この事実とユーザーさんが持ってる、『クロムレザーはエイジングしない』イメージを
書いてみたいと思います。

そもそも、革のエイジングってなんだ!
ぱっと思い浮かぶエイジングとしては
〇色が変わる
〇艶が出る
〇使い込むと、程よい柔らかさになる

などが代表的なエイジングだと思います。


タンニン鞣しとクロム鞣しの違い

1. 繊維構造の違い

クロムなめしは、化学薬品(塩基性硫酸クロム)を使って皮のタンパク質を安定化させます。この過程で、物性的に水分や油分の変化に対して影響を受けにくくなります。クロム鞣しの特性として柔軟性も上がるので手触りの良い柔らかい革を作る事が出来るのが特徴です。

他にも革を柔らかくする方法には、いくつかあり最後に味だしとして行われる工程もあります。
いくつか例をあげると代表的なのは、バタふり・加脂・から打ち・バイブレーションなどがあります。
ここに上げた工程は、味付けをする程度の加工なら良いのですが、過度に行うと革が重くなったり
移染や繊維がほぐれ過ぎてしまい、型崩れしやすい革が出来てしまったりと言うデメリットもあります。重要なのは鞣しで柔らかくする事なんです。業界的には川西の革と言われる、少し特殊な
兵庫の川西地区にあったタンナーたちが得意とする分野の革が代表的です。


2. 柔軟性と耐久性の高さ

クロムなめしの革は、元々柔らかくしなやかで耐水性や耐火性があり物性的に強い傾向があります。
使用による「シワ」などになりにくく変化が目立ちにくいです。

クロムなめしの革は比較的コストパフォーマンスに優れた物を目指すことが多く、型押しや革の表面に顔料仕上げが施されるものが多いように思います。それにより革そのものの経年変化が出にくいと思われます。特に、厚い顔料仕上げの革は傷やシワがつきにくい反面、エイジングの風合いも出にくくなります。この辺りがクロムレザーはエイジングしないと言われている所なのかもしれません。


ここであまり良いイメージの無い、顔料仕上げのメリットもあるので少し書いておこうと思います。
〇塗装の膜があるので、汚れなどが革に浸透しにくい一面もあるので
 比較的、取り扱いしやすい素材となると言えます。
〇色ブレを起こしにくいので、彩度の高い色を得意としており流行りの色目を出しやすいとも
 思います。
〇紫外線などにより色の劣化も少ないので買った時の状態を保ちやすいので、好きな色を選んだ場合
 変わらず持つことが出来ると思います。


クロムなめしの革でもエイジングする?

1. 透明感のある染料仕上げならエイジングを楽しめる

クロムなめしの革でも、「アニリン仕上げ(染料仕上げ)」のものは、顔料仕上げに比べて経年変化が見えやすくなります。例えばオイルを含んだクロムなめしのレザー(ホーウィン社のクロムエクセルなど)は、使い込むほどに色味が変化し、ツヤが増していくエイジングが楽しめます。

2. オイルを含んだクロムなめし革は変化が出やすい

2加脂と呼ばれるオイルを多く含んだ物やワックスを多く含んだクロムなめし革は、曲げたり擦れたりすることで油分が移動し色の変化が出やすいです。使い込むと艶が増し、深みのある風合いになるため、エイジングを楽しめます。

3. 使い方によっては「アタリ」や「シワ」が出る

クロムなめしでも、靴やバッグのように動きが多いものは、使い込むことでシワやクセがつき、部分的にアタリが付き艶をまします。


結論:クロムなめしは「エイジングしにくいものもある」が、「すべてがしない」わけではない

色変化が目立ちにくいが、時間をかけてエイジングする
顔料仕上げの革はエイジングしにくいが、染料仕上げのものは変化が楽しめる
オイルを多く含んだクロムなめし革はエイジングしやすい

つまり、「クロムなめし=エイジングしない」というのは誤解で、むしろ緩やかに変化し、長くきれいな状態を保ちやすい革とも言えます。タンニンなめしのような劇的な色の変化を求めるなら不向きですが、「長く使っても色が変わりにくい革が欲しい」という人には、クロムなめしの革もおすすめ出来ると思います。

artigianoの中で、おすすクロムレザーを使ったアイテムはこちらです。
特にas-25が一番人気です!

 

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